今回はpHが微生物燃料電池の
発電能力にどの程度の影響を
与えるのかを調査してみました。
微生物燃料電池は電子生産菌の
代謝(有機物の分解)を利用しているため、
環境に左右されます。
例えばカソード極における
標準電極電位は以下のようになります。
確認ですが、電池の電圧(電位差)は、
アノード極とカソード極の
電極電位の差を意味します。

これはカソード極反応を固定して、
その際の環境条件を変えたときの
カソード極電位がどのようになるか
を示した表になります。
ちなみにカソード極反応は、
上記以外の反応もありますが、
ややこしくなるので、
酸素の場合だけ抜粋しました。
この表から分かるように、
微生物燃料電池の発電能力は、
pHなどの影響を大きく受ける
ということが変わります。
微生物燃料電池のカソード極電位だけで、
1.0Vを超えることが出来ているので、
微生物燃料電池の最大出力電圧も
理論上は1.0Vを超えられる
ということです。
現実は、微生物燃料電池内の
内部抵抗が大きいので、
なかなかそうはいきません。
ということで今回は、
pHを変えたときにどの程度
発電能力に影響があるか、
追従実験してみました。
実験:pHが与える影響
ということでまずは、
自作した微生物燃料電池を
2台用意します。
条件を出来るだけ揃えるため、
同じ素材で同時に作成します。
自作方法はこちらにまとめました。
https://wireless-network.net/smfc-handmade/
私の場合は底泥型微生物燃料電池
という種類を使用しています。
本来は槽型微生物燃料電池を
使う方が結果が正確なのかもしれませんが、
作成が難しいので底泥型を使用しました。
あくまで今回の結果は参考までに。
そして肝心のpHの操作ですが、
1台は採取した土壌そのままのpHです。
もう一台は同じ場所から採取した土壌に
水酸化ナトリウムを加えました。
水酸化ナトリウ約30gを
土600mLに対して全体的に混ざるように
揉みこませながら作成していきます。
水酸化ナトリウムはホームセンター等で
簡単に入手できます。
微生物燃料電池の作成が完了したら、
24時間電圧測定装置にセットして
電圧推移の測定を開始します。
その結果がこちらになります。

1分毎に合計190時間の期間、
測定した結果になります。
190時間は約8日間です。
横軸は時間で単位は時間(hour)です。
縦軸はオープン電圧で単位はmVです。
オレンジ色グラフのpH=6.09が、
採取した素の土壌です。
青色グラフのpH=10.07の方は、
水酸化ナトリウムを加えた土壌です。
ここで注意ですが、土壌のpHは、
測定場所によって異なったりします。
ここでのpHは平均値になります。
結果を見るとやはり、
pHの影響を大きく受けている
ことが分かります。
どちらのグラフも共通して言えるのは、
微生物燃料電池の特徴ですが、
時間経過で電圧が上昇していきます。
電極付近の微生物が増殖するからです。
そして電圧推移は、pH6.09の方は、
初期電圧100mVから150mVにまで
pH10.07の方は、
初期電圧が50mVから、
最終的には70mVになりました。
開始時点でも終点でも、
両者には約2倍の電圧差がありますね。
次に、もう少し原因について
深堀をしてみます。
なぜ微生物燃料電池はpHの影響をうけるのか?
ここからは私なりの考えです。
そもそも微生物燃料電池が
pHの影響を受けるのは、
微生物の生命活動が
そこに関係しているからです。
微生物によって、生きていくために
適した環境は異なります。
最適生育値、酸性生育限界値、
アルカリ生育限界地という基準が
各微生物には存在します。
一般的に、pH=7~8の値が、
最適生育値とする微生物が
多いようです。そして最適な
pH環境から外れると、
微生物の増殖が抑えられます。
つまりそのことによって、
十分な電子が電極に渡らず、
最大出力電圧に違いが生じる
のだと考えられます。
以上が、pHの変化による
微生物燃料電池の発電能力調査でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。