電源の電力制御を行うための技術を
簡単にまとめました。
※電圧を電力という言葉で表現しています。
電圧を変えることが結局、
負荷に渡る電力が変わるためです。
あまり気にせずに読んでください。
この電力制御技術は、
調光・モータ制御・ヒータの温度調整などで
使われることが多いです。
ここで言うのは、
ON/OFFだけの2値だけでなく、
ある一定期間において、
どの程度のONなのかという話しです。
英語で「Power Control」といいます。
ざっくり言って
直流 or 交流で少し違いますが、
根本的な考え方はみな同じです。
それでは順にみていきましょう。
PWM (Pulse-Width Modulation)
「パルス幅変調」です。
直流もしくはデジタル回路を扱う回路で
出力するときの電力制御の考え方です。
ある一定期間にどれだけパルス波が
負荷に流れたかということで、
電力(電圧)を調整します。

一定期間(周期)にパルス波を
ON と OFF させます。
ONする時間とOFFする時間の
割合が出力電圧に影響します。
この割合のことを
「デューティ比」と言います。
上の画像のように、
ある一定期間の半分がONであれば、
出力電圧はHighの半分になります。
一定期間ずっとONであれば、
Highと同じ電圧が出力されます。
そしてデジタル回路において、
デューティ比が50%のパルス波を
つなぎ合わせれば、
Highの半分の電圧が得られます。
HighとLowしかないデジタル回路で、
それ以外の電圧を扱うときに用います。
マイコンのアナログ出力というのは、
このPWM技術を用いています。
Arduinoのデジタルピンを見てみると、
基盤にPWMと書かれているピンがあります。
そのピンを使うことで、
疑似的なアナログ出力が出来ます。
実際に例えば、
LEDの明るさを変えようとした場合、
電圧を変えることでLEDに流れる電流が
変わるためLEDの明るさも変わります。
単純計算、電圧が半分になれば、
50%の明るになります。
ここで少し応用してみましょう。
上の画像では、
デューティ比が50%のパルス波を
つなぎ合わせて2.5Vを出力しました。
それではデューティ比を
少しずつ変えていったら
どうなるでしょうか。
例えば、デューティ比を
だんだん大きくし、だんだん小さくする
ということを繰り返します。
するとこのようになります。

引用:富士電機「インバータの仕組み」
デューティ比を変えていくと、
電圧を周期的に変えることが出来ます。
つまり「交流」です。
インバータ回路は、このPWMを使って、
直流から交流に変換しています。
このPWMはパルス波を使っているので、
基本的にはデジタル回路 (直流) で
使える電力制御です。
では交流の電力を制御したい場合は、
どうすればよいのでしょうか。
考え方は同じで、
ある一定期間にどれだけの割合で
負荷に電力を渡すかです。
位相制御:Phase Control
ここで前提の確認をしておきましょう。
交流電源は、ex. 商用コンセントとします。
そして、それから
得られる電力を制御するために、
Arduino等のマイコンを使います。
話を戻しまして。。。
交流の制御には2パターンあります。
ゼロクロスを利用しているか否かです。
※ゼロクロスとは交流が0Vになる点
この位相制御方式は、
ゼロクロスを利用していません。
位相制御方式は英語で、
Phase Control とか
Phase Angle Controlとか
Phase-fired Controlと呼ばれています。
なぜ「位相」かと言うと、
交流をsin関数としたときに、
本来は0度から電圧が印加するところを
90度から印加させる、といった具合に
ONにするタイミングをずらすからです。
いつかのタイミングで、
ONにするわけですから、
トリガ(パルス波 )が必要です。
下の画像を見て下さい。

まず交流が流れています。
何もしなければそのまま負荷に、
終始ピークtoピークで電圧がかかります。
(黒い色のグラフです。)
この状態であれば、
LED電球や交流モータが
全力で仕事をするわけです。
しかしそんなに全力で、
仕事をしなくても良い時があるはずです。
そういうときに、
位相制御を用います。
交流回路にスイッチを置いておきます。
そしてタイミングを見計らって
トリガをスイッチに流してやります。
すると、スイッチはONになり、
交流回路に電流が流れます。
上の画像で例えば
最大値の75%の電力を
負荷にかけたいとします。
そうしたら一定期間(半波長)のうち、
25%の時間はOFFにして
75%の時間はONにします。
※あくまでイメージです。
実際の計算式は少し違います。
PWMと本質的な考え方は同じです。
ちなみに次の制御方式もそうですが、
トリガで制御するスイッチには、
半導体が使用されています。
トライアックという半導体が
使われています。
トライアックはサイリスタを
逆向き並列につなげたものです。
詳しい説明は長くなるので、
当記事では割愛しますが、
トライアックを用いたリレー(SSR)が
スイッチの正体です。
分周制御:Zero Cross Switching
この制御方式では、
ゼロクロスポイントを使います。
ゼロクロスで必ず電圧が印加します。
仮にゼロクロスでない位置で
トリガが入っても、
ゼロクロスになるまで
スイッチはONになりません。

交流がゼロクロスになるまで、
負荷に電圧が印加されません。
位相制御と違って、
スイッチがONになるのは、
ゼロクロスです。
なので半波長を一周期とすると、
ゼロクロスを使った制御では、
常に100%の出力になってしまいます。
そこで複数の半波長をまとめます。
そして、そのうちいくつかの
半波長をONにして残りをOFFにします。
上の画像のように、
半分ONにしたら50%出力になります。
調光だと明るさが半分になります。
分周制御は位相制御と違って、
ゼロクロスの位置で印加します。
つまり立ち上がりが急峻ではないため、
立ち上がり時に発生する損失が少なります。
逆に周期が位相制御と比べて
長くなってしまうので、
短い時間の細かい制御には
分周制御は向いていないです。
今回は電力制御についてまとめてみました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。